読切り小説 atami story 熱海物語

第十一章

俺は奥さんに導かれるまま、奥さんの車に再び乗り込み熱海市内を後にした。
「Eさんに逢えるんだ・・・Eさんは何をしてるんだろう」
僕はUに導かれるまま、Uの車に乗り込み熱海市内を後にした。
「Kさんに、Sさんに逢えるんだ・・・Kさんは、Sさんは何をしてるんだろう」
同じ思いを乗せた別々の車が一つの目的の為に見知らぬ場所に向かう。

「Oさん、Oさんはね資格があったんですよ!よかったですね。これで『atami』の一員ですね。特にOさんの場合は勲章が貰えるかもしれませんね。だってCDをリリースする事に成功したんですから!」
Eさんの奥さんは何を言ってるのか全く分からない・・・奥さんがおかしいのか?俺がおかしいのかさえ分からなくなっていく。
「旦那も出来なかったし、旦那の先輩も出来なかった音源リリース、それも『atami』という名前を使ったんだから・・・もしかすると凄い地位 を貰えるかもね。」
・・・Eさんの先輩ってどういう事?そして誰なんだ?

「Oさん間もなくですよ。『atami』に着きます。でも初めての際は多少の苦痛を伴いますから我慢して下さいね。大丈夫!皆体験してますから・・・それにコーヒーに混ぜた睡眠薬ももう直効いてきますしね・・・。」
「あらもう寝ちゃった。えっとOさんのパスポートは・・・あらまぁこんなにグチャグチャにしちゃって・・・」
・・・薄れゆく気持ちの中、俺の胸ポケットから『atamiのカセットテープ」』が抜き取られた事だけは辛うじて認識出来た・・・。

「Tさんはね資格があるから大歓迎ですよ!羨ましいな・・・私なんか何年掛かったか!でもこれから『atami』の一員ですね!やっと仲間になりましたね。もうコソコソする必要なんてないですよ!堂々と生きていきましょう!」・・・お前、何を言ってるんだ?
「Uさん、僕は今までもコソコソしてないし堂々と生きていましたし、今もそうですが・・・」
「嘘だ~ぁ、だってTさん色々なトラウマ持ってたり、仕事上での理想と現実のギャプの悩みだったり嫉妬や怒りとか毎日繰り返してるんでしょ?『atami』にはそんな事ありませんよ。自分の好きな事を誰にも度がめられる事なく自由にできるんですから・・・」

「Tさん間もなくですよ。『atami』に着きますよ。でも初めての際は多少の苦痛を伴いますから我慢して下さいね。大丈夫!皆体験してますから・・・それにコーヒーに混ぜた睡眠薬ももう直効いてきますしね・・・あと意識が薄れる前にパスポートだけ預からせて下さいね。」
・・・薄れゆく気持ちの中、僕の胸ポケットから『atamiの8mmビデオテープ」』が抜き取られた事だけは辛うじて認識出来た・・・。

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